独語16 咬みつき犬の犬歯切断

犬の攻撃的行動の中で、人への咬みつきは、最も厄介なもので危険極まりないものです。咬みつき攻撃行動は、恐怖によるものから支配的になったものまで、犬の行動学上いくつか分類されていますが、その多くは体験学習で強化されされていることが多いです。他の人、他の犬、他の動物に対して咬みつくだけでなく、飼い主やその家族にも攻撃する犬がいます。特に大型犬種であれば危険性がより高まり、危険動物として隔離した状況に置かざるを得なくなってしまいます。中には、飼い続けられなくなり、安楽殺されてしまうことがあります。最近は、終生飼養が求められているので、このような犬を怖がってビクビクし、犬を疑いながら世話をし、飼い続けなければならないことになってしまいます。
咬みつき攻撃行動は、生来の性質があったとしても、怒鳴る(叱る)などの暴言、殴る蹴る(体罰)などの暴力等の不適切な乱暴な取り扱いで誘発されます。このことを繰り返せば繰り返すほど、抜き差しならない状態に追い詰めてしまい過敏・過激になり、咬傷事故など危険性がより一層高まります。
この様になった犬を、行動治療で矯正できるだろうか? 答えは、NOです。 訓練士(ドッグトレーナー)の服従訓練で、訓練士を咬まなくなっても、訓練士以外の人に対しては、徐々に攻撃性が復活してしまうことが多いです。トレーニングによって、主従関係がうまく上位になった者に対しては攻撃しなくなる可能性があるが、それ以外の人には攻撃する可能性があり、確実に攻撃性がなくなる保証はできません。訓練士(ドッグトレーナー)がいる前では、攻撃する素振りを全く示しませんが、いないと攻撃する犬がいます。犬は、利口なので、人や雰囲気、状況などを感じ取って判断し、どの様に振舞えばいいかを犬自身が勝手に決めているのです。
攻撃的な犬は、オスが多いので、まず去勢手術を行い、同時に武器である犬歯(牙)と門歯を切断し先端を削って丸みをつけます。こうすることで、咬まれても大怪我にならないで済みます(安全対策)。そのうえで、服従訓練(オビディエンス・ドッグ・トレーニング)を誉めて躾ける方法で行いましょう。
攻撃的な犬にしないためには、乱暴な取り扱いをしないことの他に、成長期に誉めて躾ける方法で、予防することが大切です。ちなみに、無理なく服従心を培う方法を記しますが、方法と注意すべきことは長くなるので割愛します。①小型犬の四肢がブラブラになるように持ち上げる。②中型犬は、全身を抱えて持ち上げる。③大型犬は、前肢が地面から離れるように立ち上がらせる。④号令で、「フセ」をさせる。⑤「フセ」の後で横たわらせる。⑥その後、仰向けにさせる(無理な犬種がいる)。⑦口吻をつかむ(マズルコントロール)をやさしく穏やかに行いましょう。これらは、すでに攻撃的になっている犬には行わず、まず服従訓練を行って信頼関係を築いてから行うべきです。

ー個人のペットから、社会のペットにー