独語35 強制給餌

2002(平成14)年5月生まれの去勢オス猫(Kちゃん)は、病歴に大病はないが歯槽膿漏等で歯牙が1/2程度に減っていた。2019年9月に嘔吐と下痢の消化器障害を発症し、その際の血液検査で軽度の腎障害と軽度の貧血が認められた。脱水も認められたので輸液を含めて治療され、嘔吐がなくなったのに食欲がなく全く食べない。若い時の体重5㎏前後だったが、3.7㎏(正常時の74%)に痩せていた。そこで、流動食を注射器に入れ、猫の口角から喉の奥に入れ(経口的)強制的に食べさせ、一日に3~4回与えた(少し練習が必要かも)。Kちゃんは、5日間治療されたが、自ら食餌を食べる意欲をなかなか示さなかったので結局16日間の経口的強制給餌された。その後、やっとドライフードを食べるようになった。
2021(令和3)年5月にKちゃんは、食欲がなくなり元気もなくなった。血液検査で、軽度腎障害のみで他に異常値がないが、体重3.3㎏(正常時の66%)と更に痩せていた。2日間治療を受けたが、食欲が出ないので経口的に流動食の強制給餌を繰り返した。元気が回復したにもかかわらず食欲が出ないので2週間強制給餌をすることになった。現在食欲安定し、一日に3~4回食事を催促するが、19歳故か体重が増えないが元気が良い状態である。

過去には、この様な症例に、径咽頭食道チューブを設置して、フードプロセッサー等でドライフードやセミウエットフードをを細かくしてから裏ごししてチューブを介して投与した。今は、優れた製品があるので非常に楽である。
胃腸に障害があっても、嘔吐がなければ、この経口的強制給餌を積極的に行うのが良い。内服薬も同時に確実に投与できるので、低栄養、栄養失調等で体力低下などで死なせてはならないと思っている。しかしながら、時にはこの強制給餌に激しく抵抗するため、行うことが困難な事例がある。このような場合には、径咽頭食道チューブ胃瘻チューブ(稀に腸瘻チューブ)を設置しチューブを介した給餌する必要がある。

Kちゃんは、点滴等の治療に頼らなくても、経口的強制給餌によって食欲や元気が回復し復活した。