独語31 肉牛・乳牛

我が国では、牧柵内で牛が草を食み、のんびり歩き回る姿を見ることができるのは、田舎でも珍しい。全ての牧場(牛舎)に、放牧場や運動できる場所を備えて欲しいが、実際にどのくらいあるかは不明である。
牛は、特別なものを除いて角があるが、誕生後間もなく飼養管理者の安全のため除角(痛みを伴う)され、さらに雄牛はほぼすべてが去勢される。そして、放牧飼育、牛舎で群飼、個別ペン内飼育などで生育する。

我が国の牛肉は、公社・日本食肉格付協会の肉質等級制度が、◎脂肪交雑、◎肉の色沢、◎肉の締まりときめ、◎脂肪の色沢と質 によって5段階の等級付けしており、脂肪が多い霜降り(脂ぎった)肉を最高級にランク付けし高額となっている。多くの国民は、これを受け入れ美味しいと言う。脂肪分が少なく柔らかくておいしい牛肉を食べた経験がなければやむを得ないかも。キングサイズ(1ポンド)ステーキ或いは毎日食べることを考えると、脂ぎった霜降り肉は勘弁してもらいたい。国内のブランド牛の殆どは、この規格の最高級に合わせようとして肉牛を肥満にする飼養管理を行っている。
肉牛の飼養管理の実態は、肥育と称して狭い牛舎に閉じ込めて運動制限し、濃厚飼料(フスマや糠など)を過給し人為的に脂肪過多(肥満)にする。犬・猫を過度な肥満にさせると、虐待だと言われるが、牛を閉じ込め運動不足にして肥育することは問題であり、家畜福祉(アニマルウエルフェア)に反している。一方、放牧して脂肪の少ない牛肉を生産する者がいるが、少数なのでその牛肉を食べたくても、何処でも購入できる状態でない。消費者ニーズが圧倒的に少ないので、当分無理であろう。海外の日本向け輸出国は、高く売るために、わざわざフィードロットに閉じ込め運動制限して太らせているが、脂肪量はやや少ない。
国内の肉用牛は、黒毛和牛、褐色和牛(赤牛)、日本短角牛、無角和牛、ホルスタイン去勢牛、和牛雄とホルスタイン雌の交雑種(F1)である。

乳牛は、子牛を産まなければ乳汁を産生できないので、ほぼ1年程度(毎年)で妊娠・出産を繰り返し、一時休止期(乾乳)があるが牛乳を生産し続ける。このため、出産後約2ヵ月で人工授精で妊娠し、約280日後に出産する。我が国では、5~6回の経産で廃用牛となりと殺される。
我が国での乳用牛の飼養管理の在り方は、約73%は牛舎の狭い枠内に閉じ込めており、屋外の放牧場や運動場がなく運動させていない。太陽光や土に触れることがないまま、一時的にスタンチョン(首を上下に動かせるだけで、横や後ろを向くことができないので使用禁止すべき)に首を挟まれ、与えられた餌を食べ搾乳される。このような不健康な飼養管理で、健康を害し乳量が減るなどが起こり易い。このことは、動物福祉(アニマルウエルフェア)に反しているにもかかわらず、農水省や業界の多くは是正する意思がなく、このような工場的畜産を容認している。これに反して、健康的な飼養管理しているのは、たった26%しかない
誕生した子牛は、1週間程度母乳を与えられ、その後人工乳に変えられ約2ヵ月で離乳し12~14か月育成される。生後1年半で人工授精で妊娠し、約280日後に出産する。
国内の乳用牛は、ホルスタイン種及びジャージー種である。

我が国の大半の肉牛・乳牛の飼養管理のあり方が動物福祉(アニマルウエルフェア)に反しているので、食の安全・安心に危惧されることから、絶対に改めるべきである。

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