独語93 日本固有在来牛

日本の獣医師として、恥ずかしいことに、日本の固有種である在来牛が現存しているとは知らなかった。このことを知ったのは、大塚製薬の広報誌である大塚薬報5月号(第805号)に記載されていたからである。
日本には、山口県萩市の離島である見島で、天然記念物に指定されている見島牛と、鹿児島県トカラ列島の口之島に野生状態で生息する口之島牛の二種がいて、このうちの見島牛についての詳細記事がありました。
見島は、萩市の北西約44㎞にあり、外周18㎞、面積は77㎢、人口700人弱の小さな島で、見島牛を飼養する農家は5件で、約90頭飼養されている。過去には、600頭程度飼われていたが、1975(昭和50)年には33頭まで減少し絶滅の心配があったが、「見島牛保存会」が結成され、現在繁殖雌牛を100頭を目標に活動されている。が、人口減少、飼養農家の高齢化と後継者不足で、悩んでおられるとのこと。
見島牛は、性格温順で扱いやすく、小型で狭い田んぼで小回りが利くなどで農耕や物資運搬に大いに活用された。また、肉質は味も良く黒毛和牛のルーツと目されており、珍重されている。オス牛は、体高130㎝、体重400kgで、メス牛は、体高113㎝、体重250kgである。外国種の影響を受けていない種として、1928(昭和3)年に「見島ウシ産地」として天然記念物に指定された。
現在の日本では、肉牛として黒毛和種。褐色毛和種、無角和種、日本短角種が飼養されていて、外国種との交雑で固定化されたものである。乳用種はホルスタイン種とジャージー種が知られているが、見島牛は、これらよりかなり小型である。
島内では、天然記念物だが、島外に搬出されると指定が外れ肉用となるが、年間に10頭程度と少なく、簡単には食べれない。搬出される見島牛の全ては、肉用目的で、飼養されていない、。
実際に現物を見たいが、遠方で不便そうなので、簡単には行けそうもないのが悩ましい。
私は、この貴重な在来固有種の見島牛と殆ど知られていない口之島牛を保護し、増殖すること、遺伝的問題を回避するため、この牛の存在を広く国民に知らせるためなどから、日本各地の牧場、動物園、公園などで飼養してもらいたい。できることならば、日本の固有在来馬の各種、及び固有在来日本鶏各種も一緒に展示を兼ねて飼養して欲しい。いずれも身近な存在になってもらいたいから